やまぎりもえ
透明な引き出しに
生きてきた時間のはこを入れた
二十年ごとに一段ずつ重ねる
哀しみのはこは 重くなり
笑いのはこは どんどん軽くなっていく
展望台の一角で恋人らしきふたり
髪は栗色 きらきら輝く 瞳
声は聞こえないが 弾んだ息づかい
私はみていた
じっと見ていた
私を視ていた
かつては足を踏み入れ
忘れ物をした
「ときめき」という場所
羽根をつけ
遠くへ飛んでいったことを
自分には見えない
失われた記憶の輪郭が
6Bの線で
打ち上げる波のように
私を強く引きよせる
代赭色の空間が ふたりを
染めていく
逆光線の中で 時の砂が
ゆっくりと下に落ち
ゆっくりと上にあがっていく
引き出しの中身は 少しずつ色を落として
赤い三角形のはこは 茶褐色に
青い四角形のはこは かすんだ紫
白い丸いはこは ミルク色
三段目の引き出しを開けてみると
縫い直した「晴れ着」が入っていた
私はこれに手を通し
三度目の二十歳を迎えた
夏の日差しの下
時の雫が
ゆったりと
地面に沁みていく
慣れない授賞式に出て、挨拶の仕方も分からなく淡々と帰宅してきました。
お世話になった人々にもっときちんとお礼を言うべきだったんだろうと思う。
折角の伊藤桂一さんのサインも貰わずに、帰ってきた私は、やはり世間知らずでした。
反省しております。

